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グリーンランド紀行
旅行先 : グリーンランド
 時期 : 2007.8.
皆さんはグリーンランドってご存知ですか。世界地図の右上端か左上端に載っている、氷の島です。全島の80%は、厚い氷で覆われていて、その氷床の厚さは、平均1500m以上というから驚きです。島の中央部では年間平均気温マイナス30度。ブリザード(雪混じりの強風)が吹きすさぶ、無人の地です。人間が住めるのは、海岸線にあるフィヨルドの斜面。氷河で削り取られた深い谷の斜面は、強風が少ない。日本の6倍程もある世界最大の島なのに、人口は5万人程度。本来の住人はエスキモー(イヌイット)ですが、18世紀になって、ヨーロッパ人も定住しました。

日本との時差は11時間。今回の旅では、英国航空で、成田からロンドンへ、そこでアイスランド航空に乗り換えて、アイスランドのケプラヴィーク国際空港へ。翌日はレイキャヴィク国内空港から、エア・アイスランドのプロペラ機でグリーンランドのクルスク空港へ。でも、此処はまだ、空港のための島。本土ではない。さらに、ヘリコプターに乗り換えて、アンマサリクへ。ここで、やっとグリーンランドの地に足を踏み入れた。天気が悪いと、ヘリコプターは飛ばない。運が悪ければ、クルスク空港に足止めである。幸い、我々は好天に恵まれ、グリーンランドの地を踏むことが出来た。感激である。ヘリコプターはほんの10分間だが、見える景色は抜群。この10分間で、2日間の旅は報われたと思った。

アイスランドはデンマークから独立した国、グリーンランドはデンマークの自治領。そんな関係があって、この2国間には、今でも、パスポート審査がない。アイスランドからの飛行機も国内線扱いである。クルスク空港の売店では、頼むとパスポートに、グリーンランド入国のスタンプを押してくれる。

グリーンランド東海岸、最大の町・アンマサリク、といっても、人口は4000人に満たない。フィヨルドの北向きの斜面の底に、張り付いた町である。なぜか、フィヨルドの南向き斜面には家がない。風向きの関係だろうか。

我々の宿泊地は、街で唯一のホテル。エア・アイスランドの経営だが、夏だけの施設なので、内部は、隣の部屋の音が筒抜けの安アパートである。

小さな町であるにも拘らず、立派な2階建てのスーパーマーケットがあった。電気製品や洒落た婦人服から食料品まで、何でも揃う。東海岸で唯一のマーケットとして、重要なのであろう。物価は日本の2倍くらい。獲れた魚を、外国の港で売り、生活必需品を輸入する。どうやらそんな生活パターンらしい。

食生活は、ホテルの食事でも貧しい。干肉とジャガイモ。新鮮野菜はなく、すべてが冷凍野菜。日本のように凝った料理は望むべくもない。野菜は生育しないので、タンポポがビタミン源とか。町の郵便局の前で、屯している現地人を見かけたが、社会保障制度が行き届いているせいか、治安は良い。日本の漁村とさして変わらない位に、安全である。ここには、貧しいけれど泥棒はいない。でも、文明化についてゆけず、自殺する男性も多いという。

グリーンランド2日目は、まず約3時間にわたる氷海クルーズ。フィヨルドの外まで、100トンくらいの小船で出て、いろいろな氷山の浮かんでいる様子を眺める。重装備の厚着でも、身体が冷え切ったが、思いがけない、素晴らしい体験であった。

グリーンランドで見られる氷塊には3種類ある。
第一はPOLARアイスと呼ばれる、北極で出来た氷。厚さは4−5メ−トルで、塩分は海水よりやや薄い。空気の含有量が少ないので、黒っぽく見える。形は平べったいものが多い。北極で4−5年かっかって出来上がり、南に流れてきたもの。
第二はICEBERGSと呼ばれる氷河の氷。グリーンランドの氷河から崩れ落ちた氷塊である。上部は雪なので、空気の含有量が多く白く見える。しかし下のほうは、圧縮されて空気が少なく、半ば溶けた水のせいで、青く澄んで見えることがある。
第三は、FAST氷と呼ばれる一年ものの氷。グリーンランドの岸辺近くで凍ったもので、春になると溶けて行く。僕達の旅は夏なので、これは見ていない。
しかし、第一か第二の氷塊と、第三の氷塊が合併して、PACK氷塊と呼ばれることも多い。

大きく揺れる船の中で、カメラを手に、歩き回ったら、船酔いになりそうになって、後半は静かにしていた。

2日目の午後は花の谷のハイキング。
深く刻まれたフィヨルドの中の、北向き斜面の中を、谷川が西から東に流れる。その谷川に沿って出来た南向きの斜面には、日が良く当たる。そこが花の谷である。極北の地の短い夏に咲く花達は、まさに百花繚乱。谷川に沿っての約3時間のハイキングは、この旅行の、もう一つのハイライトであった。まずは、このアルバムに載せた花達の素顔を見てください。デンマークから夏休みで来た、エコガイドのお嬢さんから、それぞれの花の説明は聴いたけど、花の美しさに気をとられて、全部忘れてしまった。

グリーンランド3日目は今までにない快晴。出発のヘリまでは、時間があるので、娘と二人で、ホテルの裏山に登ってみることにした。その頂上からは、昨日の氷海クルーズで見た、氷塊が見える。晴天なので、氷塊は美しく輝いていた。昨日のどんよりした光で見るのとはまた違った風情。快晴になると虫が多い。ゆっくりとしたかったが、虫除け網を持っていなかったので、早々に退散した。

クルスクの飛行場とアンマサリクの間のヘリは一台しかない。ヘリは最大9人乗りなので、我々ツアーグループ11人は、先発組と後発組に分かれる。我々先発組5人は、クルスクの空港に到着したものの、後発組が到着するまでには、一時間近くある。近くに見える氷山まで、歩いてみることにした。空港の土手を滑り降りて、岩原を歩く。道はない。近くに見えていた氷山だが、行けども行けども近くならない。岩原は、結構起伏も多い。低いところには、小さな流れがところどころにある。草が生えているところに踏み込むと、ふわっと沈み込む。どうやら凍土が溶けて、隙間が出来ているらしい。結局時間切れで引き返すことにした。でも、この散歩、「溶けた凍土の上を歩く」という貴重な感覚を味わった。

後発組が到着して、弁当を食べたあと、今度は右手に見える氷塊の近くまで、皆で行ってみることになった。こちらは道がある。今度は氷塊の傍まで行けた。遠くから見ると小さな氷塊でも、近くによると意外に大きい。それが我々に距離感を失わせる原因らしい。

レイキャヴィクから2泊3日の短い旅であったが、まずまずの天気に恵まれ、グリーンランドの旅を無事終えることが出来た。エア・アイスランドのパンフレットにも、アンマサリク行きのヘリはお天気次第と書いてあり、また、急病人が出たときなどは、ヘリをそちらにまわすので、観光客は足止めらしい。 ヘリコプターには不確定要素が多いので、日本からのツアーの中には、何もないクルスク往復だけというのもある。でもそれでは、何のためにグリーンランドに飛んだのかわからない。是非、アンマサリクを訪ねてください。ちなみにレイキャヴィクからの、アンマサリク2泊3日コースは、宿泊代と食事込みで、99400ISK=アイスランドクローネ(約20万円)。クルスク往復日帰りコースは50440ISK(約10万円)です。

旅行写真
氷海
氷海

No.1
晴れの日の氷塊
晴れの日の氷塊

No.2
雲の間から
雲の間から

No.3
流氷
流氷

No.4
裏山より
裏山より

No.5
氷山の履歴
氷山の履歴

No.6
氷山の転覆
氷山の転覆

No.7
氷塊の吹き溜まり「遠...
氷塊の吹き溜まり「遠...

No.8
氷塊の吹き溜まり「中...
氷塊の吹き溜まり「中...

No.9
氷塊の吹き溜まり「近...
氷塊の吹き溜まり「近...

No.10
村で唯一のホテル
村で唯一のホテル

No.11
村の全景
村の全景

No.12
アンマサリク
アンマサリク

No.13
集合住宅と湿地帯
集合住宅と湿地帯

No.14
花の谷
花の谷

No.15
花の斜面
花の斜面

No.16
花の競演
花の競演

No.17
花の谷より(1)
花の谷より(1)

No.18
花の谷より(2)
花の谷より(2)

No.19
花の谷より(3)
花の谷より(3)

No.20
花の谷より(4)
花の谷より(4)

No.21
花の谷より(5)
花の谷より(5)

No.22
花の谷より(6)
花の谷より(6)

No.23
花の谷より(7)
花の谷より(7)

No.24
花の谷から(8)
花の谷から(8)

No.25
花の谷から(9)
花の谷から(9)

No.26
花の谷から(10)
花の谷から(10)

No.27