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たえず、相手に注目してやり、相手のほめるべき点をほめるテクニックを身につければ、相手に好かれるだけでなく、相手のことも発達させることができるのである。
二つ目の自己対象機能は、理想化自己対象機能である。
人間というものは常にほめてもらうため、注目してもらうために張りきって行動できるものではない。あるいは、ほめてもらおう、注目してもらおうと行動したのに、思ったような反応が得られずに、不安になったり落ち込んだりすることもあるだろう。
たとえば、よちよち歩きができるようになった子どもに母親が「すごい、すごい」といってあげなければ、その子どもは落ち込むだろうし、不安になるだろう。
あるいは、いじめられて落ち込んで、もう学校に行きたくないと思っていることもあるだろう。
こんな際に、父親が自分からみて神様のようにみえていれば、「大丈夫」の一言をかけてもらったり、ひざの上にのせてもらうだけで、安心感も得られるし、自分が強くなったような気になれる。
また父親のようになりたいということで、再び生きる方向性が与えられる。
そして、人間というのは、不安な時や落ち込んでいる時に、こんなふうに神様をもちたがるものなのだ。
コフートはこのような形で、親や治療者が相手の神様役を引き受けて、相手に安心感や生きる方向性を与えてあげる機能を理想化自己対象機能と呼んだ。
一般の人間関係にも、これは応用できるだろう。
特に相手が不安な時や落ち込んでいる時に、恋人や部下の神様∽役を積極的に引き受けてあげることができれば、相手に安心感を与え、そのことで相手の尊敬126を余計に引き出すことができるものなのだ。
最後は双子自己対象機能である。テクニックとして、治療者が相手をほめてやろうとしても、患者は「どうせ先生はお世辞をいっているだけなんでしよ」と反応したり、または神様を引き受けてやろうとしても、かえって治療者に対して羨望や僻みを感じるだけのことがある。
これは、なぜ起こるかというと、患者が治療者のことを同じ人間だと感じられないからであるとコフートは考えた。
ここで治療者が、「私も若い時には、そういうことがあったよ」とか「患者を治せない治療者もみじめなものです」などといって、患者と同じ人間なのだとわからせることで治療を進める方法がある。
これも日常の人間関係で使えるテクニックである。
たとえば、前述の口うるさい年配の女性社員の場合も、「どうせ自分なんか」という形で、自分が同僚たちと同じ人間なのだという感覚を失いかけているから、非適応的な言動をとって、問題児となっているのかもしれない。
時々、こちらから話しかけてあげて、同じ人間だという感覚をもたせてあげるだけで、相手の態度も変わり、職場の人間関係が円滑にいくことだって十分考えられる。
コフートにいわせると、この三つの自己対象機能は、人間が人に求める基本的ニ−ズである。
人間は、この三つのニーズが満たされないと不愉快になるし、攻撃的にもなる。
逆に、こ第2章頭をよくするトレーニングの三つのニーズを満たしてくれる人のことは好きになるし、相手を手放したくない気持ちが強くなるものだ。
周囲の人間と上手な相互依存関係を築いていくためには、この人間の三つのニーズを知って、まず自分のほうから相手に心理的に依存させてあげることが賢明な生き方といえるだろう。
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