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漆黒からの足跡
漆黒からの足跡

タイトル  漆黒からの足跡
目的地 アフリカ・中東 > モロッコ > マラケシュ
場所 マラケシュ
時期 1992 年 7 月
種類 景色
コメント 地理にうとい町を歩くコツの一つは、単純だが建物を目印にする
ことである。  
ここ、マラケシュではクトゥビアの塔で、世界で二番目に高いとさ
れるイスラムのミナレットである。
こんなイメージを描いていた―――。
−クトゥビアの赤い塔に赤い月−。    
頭上には赤くはないが、たしかに月があった。                
視線を一手に受けながらさらに進むと、メナラ通りはジド門につき
あたる。   
旧市街を囲む城壁にある12の門のうちの一つで、ここからが、メ
ディナ(旧市街)である。
ライト・アップされた真っ直ぐ天にそびえ立つ重厚な塔がみえ隠れ
する。    
風がすこしでてきたようだ。
息がすこしあがる。
この異邦人に向けられた無数のフクロウのような眼たちが、自然と
足早にしたようだった。                   
しかし、なんとかこの洗礼を自己のものと、真嗜に受け止めたつも
りだった。  
そのとき私は、わずかながらであるが何かから脱皮した、あるいは
解放された、妙に晴れやかな心地でいた。
足どりは自然に軽くなり、やがて通りには人も多くなり、心臓の音
が高鳴りはじめた。
この町の心臓である広場の「音」に呼応するかのように。    
−さあ、ジド門をくぐっていこう−              
心のなかでひそかにつぶやいてみた。
−−−力を尽くして狭き門よりはいれ−−−   
アンドレ・ジイドの「狭き門」の冒頭にもでてくる旧約聖書の
なかの一節である。  
ここは、アッラーの国であることを忘れていた。 


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