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ハンハリーリーのレストランにて
ハンハリーリーのレストランにて

タイトル  ハンハリーリーのレストランにて
目的地 アフリカ・中東 > エジプト > カイロ
場所 ハンハリーリー
時期 1993 年 10 月
種類 観光スポット
コメント ――――さて、プールサイドである。  
メナハウス・オベロイホテルのプールサイドからは二つ並びのピラミッドの頂点にあたる三角のシルエットが覗ける。
今朝はあっという間に通過してしまい、もうあれを間近に見ることもないのか・・・・・・・。

 エジプト最後の日を感傷的に、陽炎のようにゆらいでいるピラミッドを眺め続けていた。
そのうち、忌々しいラクダ屋の顔が浮かびやめた。 
プールサイドに目を移すと、シーズンはずれのバカンスを楽しむ人たちが、水遊びをしたり、本を読み耽ったり。
何をするでもなく(まるで、日中の町角でいつもみかけるア ラブの男たちのように)チェアでくつろいだり、彼、彼女らに流れる時間は(我が同胞の君のごと
く)、優雅に、緩やかに、たおやかに流れているのだった。
それに比べて私の陰惨な未来を待つ身のつらい時間のことよ。つくづく損な役周りだ。  
砂漠でも10月は秋にあたるのだろうか。
太陽が西へ傾くにつれ、少しずつ肌が冷えていく。
焼けた肌が西日に照り赤くなるまでカンパリを何杯お替わりしただろうか?   
プールサイドのレストカフェ「オアシス」で注文したカンパリ・ソーダは甘さのなかにスパイシーな苦み走った好物の飲み物である。そのカンパリはいつもよりほろ苦さが増しているような気がするのは、あくまでも、あくまでも気のせいかもしれない。    憂鬱さから、やがて私たちを取り巻く不吉な予感・・それは現実となって・・・。

――――意識が蜘蛛の糸にひかれるように回復しだしたころ、視力より聴力が先に回復した。目隠しされていた。
耳にしたのは3人の男の会話だ。         
「飛んで火にいる夏の虫とはこいつらのためにあるようなもんだな」      
さっき、こいつが40$払った財布の中には100$札がぎっしり詰まってましたぜボス。まちがいありやせん」−嘘つけ・・−                
「さあ、お楽しみはこれからだ。こいつとこいつを別々の部屋へ案内してやれ、お嬢さんは、あっちのスペシャル・ゲストルームの方へご案内しろ」       
妻もすぐそばにいるらしかったが、結局最後に交わした言葉も彼女が最後に微笑んでいたかも記憶の彼方へ過ぎ去っていた。もう、会えないのか。       
「こっちの方はどうします?」                       
「こいつか?こいつに私は用はない。こいつの元所持品を除いてな。それともアブドーラかモーセス。おまえらどうにかするってか?」
「めっそうもねぇ、ボス。おいらたちにも用なしでさあ」           
「わかってるなら、とっとと始末しな」―――――。

                                     

めっそうもねえ・・・ノン・カタギの方々は映画ではいつもこんな調子の話言葉になるのが定番だなー。などと一人空想に耽って、まどろみのなかでニヤニヤしていた。   
まわりに気に留めた人がいたら、さぞかし不気味がられたことだろう。     
奇妙な東洋人のイメージをさらに植えつけるのに協力したに違いない。     
どんどん芝居じみた悪い想像は増長していくのだったが、それを振り払おうと、この楽しくもやがて悲しきそれでもやっぱり愉快で滑稽な一週間を振り返った。

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