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サハラ砂漠にて
サハラ砂漠にて

タイトル  サハラ砂漠にて
目的地 アフリカ・中東 > モロッコ > その他の都市
場所 メルズーガ
時期 1992 年 7 月
種類 景色
コメント −砂の代償−                                                           



 枕を、起きる回数分叩くいて床に入ると不思議とその時刻に目が覚めるという。 
昨夜、寝る前に私が叩いた回数は3回だった。                
つつかれたように飛び起きて、部屋のテーブルに眠気眼なこでたどり着き、腕時計
をみると3時ちょっと前だった。
宿泊しているSホテルのレセプションが手配してくれたメルズーガ砂漠行きの「早
朝ツアー」はロビーに午前3時40分の集合、4時に出発の予定だった。    
早朝立つのには、もちろん理由がある。日の出を砂丘で待つのだ。       
陽がさしたばかりの砂丘は、日中ののっぺらとした趣と異なり、黒と黄色のシルエ
ットと風がたなびいて醸しだす砂紋が、人の心を打ってやまないと言われている。
モロッコへ来た、最大の目的地であった。                  
エルフードからメルズーガまでの所要時間は1時間から2時間かかるとされてい
る。  
このおおいなる誤差はひとえに運転手の土地勘によるからで、整備された道路はな
く、360度視界が利く、ただただ岩砂漠を行かねばならないからだった。
下手な運転手に当たってしまうと日の出に間に合わない時もあると聞く。
モロッコを観光するには、政府の公認ガイドとか公認観光業者と名乗る者たちに頼
めというが、その数わんさかとおり、その多くは眉つばものと心得ていたほうがよ
い。
政府公認ガイドもしくはその準る者とされるローカルガイドもこれみよがしにおお
きなメダルを首からさげているが、売買されたり、他人から非合法で手にしている
輩も少なからずいるのだ。        
モロッコは詐欺師とガイドの識別は曖昧模糊としており、戸惑うこと多い。   
あたるもはっけはずれるのもはっけ、ホテルが手配してくれた我が運転手氏はどう
か? 
のるか、そるか?
我等が現代のトアレグ族(砂漠案内人)に幸あれ。         
 轟音を上げランドローバーは隊列をなして暗闇を行く。           
その様はいつかどこかで観たことのある映画の大冒険旅団のようで、威勢がよく、
ついついインディー・ジョーンズのテーマをくちずさんでみたりする。     
5分も走るとアスファルトの道はなくなり、シートのきしみと車体の揺れの激しさ
に、辟易としだすのにまた、5分とかからなかった。
整然と隊列をなしていた車はしだいに四方八方に散りはじめた。
暗黒に光る蛍(ライト)は一つ、二つと視界から消えていった。
心なしか、気掛かりなのは、深い闇のなかだというのに、我が運転手殿は黒いサン
グラスをかけているのだ。
そして、前を直視したまま一言も話さなかった。       
1時間ばかり走ると、明かりが見えてきた。
村かと思ったが、ユースホテルのような建物が2軒ポツンとあり、またたくまに通
りすぎていった。        
そして、やがて前方に山の麓が照らしだされ、車はゆっくり速度を緩めていった。
そして止まった。めざす、砂丘に着いたのだった。              
先着が何組かあるようで、同じ型のジープが数台群れをなして止まっていた。  
大勢の人だかりだった。
何と観光客の多いことか。
出発地エルフードにはホテルはわずかしかなく、このような人数の許容量なないは
ずだが。
降って沸いたとはこのことか。 
関心するのも束の間、わたしたち人種の異なった即興ツアーメイト6名も大勢の
「青い人」と呼ばれる独特の青装束を纏ったトアレグ族に囲まれた。      
皆、手に黒く平べったい箱を持っている。この箱の中身はすぐに了見がついた。 
アンモナイトの化石である――。                      
この地球上、異邦の人がロマンとサスペンスとファンタジアを身勝手に求めても、
全ての場所において「土地の人」は放っておいてくれはしない。
たとえ、いかなる辺境な地に孤独を求めようとも。
しかし、彼らの忍耐力にはつくづく感心させられる。
いつ、誰が、訪れるかわからないような渓谷の、殆ど崩れかかったカスバの入口に
見物料と書いた紙を持ってずっと「待っている」人もいるのだ。
そんな光景を目にしたとき、いつも回想することがある。

−−高校生のとき、修学旅行で信州へ行った。長野の善光寺の見学を終えた私たち
は次の目的地へとバスに乗り込もうとしていた。
その時、手籠にリンゴを 入れた行商の老婆が消えいるような声で「りんごはどう
かい?」と求めてきた。    
リンゴは欲しくなかったし、その数個のりんごは腐りかけていたようにうすびれて
いた。
それでも何故かその時私は「一つ頂戴」と求めていた。
すると、老婆はりんごは3つからしか売らないと譲らず、わけがわからないまま車
中の私の手には3つのりんごがあった。結局、りんごは1個も食べずじまいだった
−−−。               

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