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ゆけ、キリマンジャロへ向けて
ゆけ、キリマンジャロへ向けて

タイトル  ゆけ、キリマンジャロへ向けて
目的地 アフリカ・中東 > ケニア > その他の都市
場所 アンボセリ
時期 1998 年 9 月
種類 景色
コメント 厚い雲が垂れ込める早朝、2日間のアンボセリに別れを告げ、アバーディアへ向かう。
再びナマンガ・ゲートからナイロビまでとって返し、さらに北へニエリの町をめざす。
アバーディアは山岳地帯の森のなかに動物たちが生息している国立公園だ。
「Hちゃん、よくキリマンジャロの頂上を発見したね」
私は車中でHを労った。
「だって、みんな、あれは雲だって言い張るんだもん」
Hはふくよかな頬をさらに膨らます。
実はキリマンジャロ――――日中かすかに山の頂を垣間見せていたのだ。
雪が被ってあるからほとんど雲と区別がつかなかったのだ。
私たちは頑なに拒否していた。
「そう、あれはキリマンジャロの雪です」パトリックの裁定で、私たちはあっさり軍門に下った。
私はアンボセリ初日の夜、ロッジで書き綴った妻宛のハガキをMに見せた。
『―― 子どもたちは元気にしてますか?
 迷惑かけるけど、私は充実した毎日を送っています。
 昨日、厚い雲の切れ目に雪を戴くキリマンジャロの山頂と
地平線に沈む夕日を見て、
 ―夕焼けに溶かし込む様々な邂逅―が濃縮され、
涙がでそうになり、(もちろん流したけど)感動しました―― 』
こんな内容だった。真実よ何処へ?の脚色テンコ盛りだ。
しかしMはいつものように、―嘘くさー!―、―わざとらしー!―などと突っ込まない。
むしろ素直に文面に感動しているようだった。やっぱり、変な子だ・・・・・・・。
「ええなぁ。仲よさそうで」ハガキを返しながらポツリと漏らした。
『送り出してくれてありがとう。大好きだよ、ママ』なんて最後に書いてる部分をさしているのだろうと察した。
でも、その最後の部分こそ、すごく嘘くさいんですけど・・・・・・(笑)。
 Mは遠距離恋愛中だ。しかも足掛け4年だという。東京か大阪で月1回会うらしい。
昨日、そのことを聞いてはいけないことを聞いて損したような気分でいた。
サファリの日中は何もすることがない。私のロッジ前で身の上話などしてるとき、
「彼氏はいないの?次はMちゃん言う番ね。はやく楽になっちゃいな、カカカカッ」おっさんや。
「私、遠距離なんです。それで困ってるんです」普通軽く流すものだけど、いきなりあっさりと悩みを訴えるようにして漏らすMだった。やっぱり変な子だ。
Mに太鼓持ちさせる道中(というか私が腰巾着?)が、すっかり彼女の背後の彼氏の影が私を睨んでいるようで、少しばかりスタンスを変えざるをえなかった、なわけないかっ(笑)。
Mに得々と吹聴する私は恋愛王道研究家に変身だ。          
「うーん、それはもたん(バッサリ)。4年は奇跡だ。でもそれは付き合っているっていう形態じゃないよね(バッサバッサ)。だって考えてみ?月1回で4年なんて惰性以外の何ものでもないやん。あ、傍から見ての、よくある話だかんね。心がとっくに離れているのに状況を変えようとしないだけのことなんだよ(ドッカ―――ン)。だからさ・・・・・・・ワシなんかどぉ?(笑)」                                  
分かった風な口をきくとはこういうことだな、吾ながら呆れます。                     
「やっぱ、そうなんかなぁー」Mは心もとなく言う。
え?ギャグなんですけど・・・・・。
「せやせや、きっと東京には本妻がおるに違いない」よせばいいのに、とどめだ。
「そうかもしれん・・・・」
帰ってからのことはしーらーないっと。
「なんや・・・・いつもの切り返しはどしたん?」
それっきりで、話題は変えることにした――――。
マナンガ・ゲートを越える頃には雲はますます暗くなっていった。
車はガソリンスタンドで休憩となった。給油して即出発だが。
「さぁ、車に乗らないかん、ゆーときにかぎって、出そうに!なるっ!」
「マナブー・・・・・それ・・・・・マイナス500ポイント」
「えー!だって、アンボセリでさんざん『ゾウの糞や!ゾウの糞や!』言うて喜んどったやんか?」
「ゾウのはええねん!」
Mはキッパリ言い切った。
しかし、生理現象はしょうがない。
だが、ガソリンスタンド裏のトイレを借りたが、男性用の扉の鍵がいっこうに回らない。
仕方なく女性用のを拝借したが、水洗が壊れていて見事な山盛りであった。
先にMもSもHも用をすましていたはずだ・・・・・。
ばつ悪そうにワゴンへ戻る私へ8個の瞳が凝視していた。
フランクまでこっち見るな!
乾季の9月かと疑うくらい今日は雲っていたが、とうとうナイロビ近くから雨になった。
フランクはおっとりした性格とは裏腹に見事なまでに運転は荒かったが、それでもナイロビまでは5時間かかった。
ナイロビのホテルで買ったケニアの地図(690シリングもした!)を眺めていると、アバーディアへはまだ150キロ程北へ走らなければならない。
ティカ、エンブといった小さな町を通過する度に雨のドシャ降り状態が増すようだった。
気分まで滅入る。
ナイロビで海抜約1,700メートル。アバーディアはオルドニョ・レセティマ山の4,100メートルを最高に3,800メートル前後の山々を擁する山岳公園だ。
今夜宿泊する「ジ・アーク」ですら2300メートルを超える地にあるらしい。
アフリカで寒さ対策が必要とは全く心外だ。
 例のガソリンスタンドからパトリックは「ネコちゃん」たちの1号車に乗り移った。
彼女とお友達のKと、チビとノッポのコンビは「ダチョウに乗れる」公園へ寄るそうだ。
そんなオプションがあるとは露知らずだったが、私たち(たち?)4人は誰も興味がない。
逆にマサイ・マラへ入る前のマサイ族の村を訪ねるツアーは私たちのみ参加らしい。
これって奇遇?案外パトリックは侮れない男だと頭をかすめた―――。
それより、Mが盛んに勧めるオプションがあった。
「マサイ・マラでバルーン乗らへんの?皆乗るんやで。マナブー絶対後悔するで」
日の出前にバルーンを飛ばして、地平線から昇る朝日と広大な平原に戯れる動物たちを空から眺める約2時間のサファリの趣向だ。
バルーンを降りた所での朝食付きである。
「シャンパン付きブレックファスト」とガイドブックやパンフレットでよくお目にかかるやつである。
385ドルもする。
いくらなんでも高すぎる。
沖縄から北海道まで飛行機で往復できる料金だ。
シャンパン5本飲んでも元がとれないような気がする。ケチつけるわけじゃないけど(いえつけてましたね)。
「シャンパン言うても一人チビッと一杯くらいやろ?3本ワシにくれるんやったら考えるけど」
と嘯いたが、なんのことはない。銭が惜しいのと命が惜しいからだ。
高所恐怖症なのだから、どうしようもない。
「もったいない、もったいない」というMの勧誘攻勢。
「もったいない、もったいない」とかわし続けた。

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