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山鳩ロースト、鳩のコンフィ赤ピーマンソース
山鳩ロースト、鳩のコンフィ赤ピーマンソース

タイトル  山鳩ロースト、鳩のコンフィ赤ピーマンソース
目的地 日本・アジア > 日本 > 東京都
場所 丸の内
時期 2004 年 2 月
種類 食べ物
コメント ビルの高い所のとあるフロアの一角に席はとってあった。
席についた真下は東京駅だった。
か細い翠色の光が蛍のようにつつましくゆらぎ、彼女には物足らない明かりだったかもしれない。
「ごめんね。副都心のビルが見えたりするほうがよかったんだけど、食材選びとバッカスの賜物の豊富な(笑)ここを選んだんだ。三ツ星系はニセモノ系くさかったよ(笑)」
「いえいえ、私にはこれで十分ですよ。綺麗じゃないですか」
Aさんは言葉を推敲するのに長けたひとだ。
―頭がいいんだな―とすぐにわかる。
Dumazet社のCondrieu "Coteau Fournet‘85をソムリエにお願いする。
もう一ヶ月前からAさんとこれを飲もう、と決めていた。
これからの人生、チャンスがあれば何度もコンドリューとつきあっていくと決めてある。
グラスがかすかな翠色の泡立てて、駅のプラットホームのイルミネーションと交錯した。

「ほら、鼻につけてかいでごらん」
「うわっ、甘い香りがしますね〜〜」
「アプリコットや薔薇やいろいろなブーケの香りでしょ?でも飲んでみるとしつこくないキリッとした酸味もあるでしょ。でね、含んだ余韻が蜜のように甘いの」
「ほんとだ」
「一度に何度も美味しい。Aさんにピッタシでしょ?(笑)」
「またまた、まるくん、でました。美女泣かせの手腕はここで発揮してもだめですよ(笑)」
「いえいえ、飲むほどに、いろんなこと喋りたくなる魔法も君にかけてあるから(笑)」
もちろん――――。
もちろん、魔法はかかった。
「私だって、一度切れたときがあったんですよ。相手の方の胸の中までは覗けないけど、、、、、、でも、まるくんなんでそんなことまですぐにわかるんですか??」
「笑、、、だから魔法だって・・・」
いろんなことを知った。いろんなことを知らされた。
でも、知りえた魔法の扉は閉じて、私がそっと胸の中に秘めておこう。
いつか、Aさんの魔法が自ら解き放ち呪縛から開放されるのを待ち、祈りながら―――。
山鳩ロースト、鳩のコンフィ赤ピーマンソース、豚の内臓各種、トリュフ、エピス風味江戸前のアナゴ、フォワグラ、ほうぼうや各種魚介のブイヤベース、とうもろこしのパンケーキ、ひよこ豆のビネガー風味。
赤はブルゴーニュのGivry 1er cru "Clos jus"をデキャンタで。
わずかな時間を珠玉の時間にかえたのはAさん自身がもつ不思議な魅力の魔法に違いない。
きっと魔法の手にかかったのは私なのだ―――。
店員が勧めてくれたフロマージュ各種は断った。

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